「my home town わたしのマチオモイ帖」は、全国のクリエイターが、それぞれ自分の思いのある「町」を冊子や映像で紹介する展覧会です。
私は毎年、クリエイターとしての『自分の棚卸し』だと思って参加しています。
作り続けることで、自分の想いが研ぎ澄まされていくのを感じます。
ふなば帖(山形県酒田市船場町)
海のない信州で生まれ育った私にとって、毎年夏休みに帰省する母方の祖父母が住むマチは「トクベツ」でした。
港町なので、散歩に出ると強い潮の香りがして、空気もべっとりと体にまつわりついてくるような気がしたものです。
酒田港には、ランプをずらりと吊るした漁船が何艘も泊まっていて、あれは何だと父に尋ねると、夜に点灯させて、その光に集まるイカを捕まえるのだと教わりました。灯りに集まるイカの群れを、想像して描きました。
三才山帖(長野県松本市大字三才山)
このマチの山の上には、「浅間温泉国際スケートセンター」という名前の、大きな大きなスケートリンクがあります。
子どもの頃、学校行事や家族のお出かけで何度も訪れたものでした。
長い時間バスに揺られてようやく着くこのスケートリンクはとても広くて、
私には一周するのにもやっとでしたが、スタート地点に戻ってくると『あともう一周!』と思えるのが不思議でした。
今は閉場してしまい、私の思い出の中にあるスケートリンクです。
沢村帖(長野県松本市沢村)
このイラストは、8月上旬に松本市内の各地で行われる「ぼんぼん」という行事を描きました。女の子だけが参加するもので、紙の花を頭につけ、浴衣にほおずき提灯をさげた格好で「ぼんぼんとても今日明日ばかり、あさっては山のしおれ草」と歌いながら、町内を練り歩きます。
毎年、祖母の縫った浴衣を着せてもらうのが楽しみでした。
薄暗がりに浮かび上がる浴衣の白さや、提灯のあかりの柔らかさを、今でも鮮明に覚えています。
まつもと帖(長野県松本市)
このイラストは、「三九郎(さんくろう)」という正月行事を描きました。
子どもたちが近所の家々を回って集めた正月飾りや前年のダルマでやぐらを組み、燃やします。
この火であぶった繭玉団子を食べると一年無病息災、また書初めを燃やして高く舞い上がると字がキレイになると言われています。